「唐突に申し訳ないんですが。私とつがいになる気はありませんか」
「本当に申し訳ない話題だな。なってどうする」
「色々するんです」
「お断りだ。意味が分からないし、第一俺に何の得がある」
「得? 意外と現実的なとこ見ますねえ」
「大事な部分だろうが」
「ふーん……ではうちの財力とか、どうです。なかなかアテになるもんですよ」
「別に金なんか欲しくない。しかもそれ、親の遺産だろお前」
「えー。だけどこんなフェロモン系の美人な嫁がいたら嬉しいじゃないですか」
「よく自分の口から言えるな、そんな事」
「君が言わないんで私が言うんです」
「ふざけるな。どうして俺がお前を褒めなきゃならない」
「ふざけてません。実際ホラ、この脚線美。捨てたもんじゃないでしょう?」
「……俺は、顔だの足だのはどうでもいいんだ」
「ほう。弟くん見てたら君の趣味も何となくあんなもんかと思ったんですが」
「あんなもんって」
「顔は並以上、グラマラス、平均的に頭は弱くて、脱ぎのモーションがエロい」
「いつ確かめたんだそんなの」
「がっつり見たんです。いやあ最中だとは知らず邪魔した時があってですねー」
「やめろ。もういい。聞かせるな」
「自分から訊いといて言いますねえ。でも好きでしょう、旬の女性」
「好みまであいつと一緒にするな」
「あっ、朴念仁の君にも好みとか存在するんですね! 意外だなー!」
「……おちょくりに来ただけなら帰れ」
「ひどい。私はつがいになってくれと言いに来ただけなのに」
「だから、そうなった所で俺が得する事なんかないだろ。一つも」
「ありますよ」
「嘘言え」
「ほんとです」
「何があるんだよ」
「愛」
「…………」
「と言うよりは、真心ですか」
「お前が男なら今の台詞で即滝壺だぞ」
「女だから問題ないんですね、よかった」
「そういう話をしてるんじゃない」
「本気ですよ私は。病める時も健やかなる時も君を愛します」
「さり気なく宣誓するな」
「チッ。ノリで復唱してくれるぐらいの男気はないんですか」
「阿含と同じ思考回路だと思うなよ…」
「冷たい人だ。いいですよ、その阿含くんに慰めてもらいに行きますから」
「それはだめだ。俺が困る」
「困る…? ここに来てブラコン見せつけるってどういう神経してんですか、君は」
「……どうしてそう偏った解釈をするんだお前は」



(ポジティブ と見せかけて肝心なとこにネガティブが働く大脳新皮質)