「狸寝入りとは良い度胸ですねえ」
じょり

「はやく起きなさい。私が笑っているうちに」
じょりじょり

「演技してみせたって無駄ですよ」
じょりじょりじょりじょり

「君のほんとの寝顔はもっとアホ可愛いって分かってるんですからね」
じょりじょりじょりじょりじょりじょりじょりじょり
「さっさと目を開けないと」
じょりじょりじょりじょりじょりじょり
「頭蓋が陥没しますよ」
じょりじょりじょり


じょ…


「……こら待て。寝てる人間相手に何やってるんだお前は」
「おや、やっぱり起きてましたね? 人が悪いですよ雲水くん」
「狸寝入りだのアホだの耳元で喧しくされたら誰でも起きる」
「だって君のは実際タヌキだったじゃないですか」
「本当に寝ててもあれだけ執拗に構われたら目が覚めるだろう」
「執拗って。坊主触っただけじゃないですか」
「振動が頭に響いてすごく鬱陶しかった」
「阿含くんはつついてもいじっても始終バカみたいに爆睡でしたよ」
「あいつは常人とは造りが違うんだ」
「はい出ましたー。金剛兄弟お得意のブラコントーク」
「茶化すな。俺はブラコンじゃない」
(五割は弟へのコンプレックスで出来てるような人間がよく言う…)
「今何か言わなかったか」
「ん。君が好きで好きでたまらないって言ったんですよ」
「……そんなの、嘘かどうかくらい俺にも分かるぞ」
「素晴らしい洞察力ですね。では改めてその素晴らしい頭に触らせて頂いても」
「良くない」
「堅い事言わないでください。君ったらいつか生き仏になっちゃいますよ」
「望む所だ。それよりお前、『おあずけ』と『ハウス』ぐらい覚えられないのか」
「お触りしたから坊主が減るモンでもないでしょう。おあずけなんか必要ありません」
「坊主が減る減らないの問題じゃない。自制心を養えと言ってるんだ」
「そういう説教は本能のまま生きる弟くんにでもしてあげたらどうです?」
「あいつは良いんだ。百回言っても聞かないから」
「ほーらまたブラコンだ。甘やかしは彼にも君にも毒ですよ」
「うるさい。さっさとハウスしないとうちの雑用押し付けるぞ」
「それこそ望む所ですね。今日から金剛家の家政婦さんになってあげましょうか」
「ああ。謹んで断る」「…君は素直過ぎて可愛くありません」



(添い寝と称して夜這いでもかけてやろうという黒い思惑のある家政婦さん)